大判例

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仙台高等裁判所 昭和25年(ネ)38号 判決

原判決中、石戸村議会議員解職請求受理取消に関する部分については、控訴人の控訴を棄却する。

その余の解職請求に基く投票無効に関する部分については、原判決を取り消し、控訴人の訴を却下する。

訴訟費用は第一、二審共控訴人の負担とする。

二、請求の趣旨

控訴代理人は、「原判決を取消す、被控訴人の控訴人に対する石戸村議会議員解職請求受理はこれを取り消す、昭和二十四年九月二十七日告示の解職請求に基く投票は無効とする、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求めた。

三、事  実

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、「一、本件解職請求受理についての異議申立に対する却下決定に対しては、訴願の申立をしなかつたものである。なお本件投票に関しては本訴以外に何等の訴も提起していない。二、本件は訴願の裁決を経るときは投票期日が到來し投票が行われることになつて著しい損害を生ずる虞があるのであり、しかも本件は投票の行わるべき過程にある行政処分それ自体が違法なものであるから、異議訴願の手続を経た後でなければ出訴できないものでない。」と述べた外、原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。(立証省略)

四、理  由

案ずるに、地方自治法第八十五條によると、政令で特別の定をするものを除く外同法第四章の規定が普通地方公共団体の議会の議員の解職の投票に準用される結果、同法第六十六條、同法施行令第百十五條により、市町村の議会の議員の解職の投票の効力又はその解職の投票の結果の効力に関し不服がある者は異議訴願の手続を経て高等裁判所に出訴することができるのであり、しかも右市町村の選挙管理委員会の決定に対しては更に訴願による裁決を受けた後でなければ裁判所に出訴することができないものであることは明らかである。そこで控訴人の本件の訴について見るに、控訴人は、第一に、本件石戸村議会議員解職の請求は違法であるからこれを受理した被控訴人の処分も亦違法であるとしてその受理取消を求めるものであるが、このように解職の投票が行われる前の過程において、解職の請求に関する違法な行政処分の取消を求めるため、当該事務を管理する選挙管理委員会を相手方として直に裁判所に出訴することを許した規定はない。のみならず前記法條の趣旨に徴すると、解職の投票前の過程における解職の請求に関する違法な行政処分は、その解職の請求についてされた投票の効力に関する異議の事由として主張することはできるけれども、その違法な行政処分の取り消しを求めるため直に裁判所に出訴することは許されないものと解するのが相当である。なお行政事件訴訟特例法第二條但書によると、訴願の提起があつた日から三箇月を経過したとき、又は訴願の裁決を経ることにより著しい損害を生ずる虞のあるときその他正当な事由があるときは、訴願の裁決を経ないで訴を提起することができると定め訴願前置の原則に対する例外規定を設けているが、仮に前記地方自治法第六十六條に規定する異議訴願の手続についても右例外規定の適用を排除するものではないと解し得るとしても、右は本件の場合解職の投票の効力又はその投票の結果の効力に関する訴の提起について右のような訴願前置の原則に対する例外の場合を認め得ることを示したに止まるものであつて、解職の投票前の過程における解職の請求に関する違法な行政処分について直にその取消の訴を提起し得る根拠となるものでないことはいうまでもない。よつて控訴人の本件解職請求受理取消の訴は不適法として却下を免れないものであり、この点に関する原判決は右と同趣旨に出でたものであるから相当であつて、本件控訴は理由がない。

第二に、控訴人は、本件解職の投票は、被控訴人の違法な議決及び告示に基くものであり、また被控訴人の選挙管理行爲は法規に違反するものであるとして右投票を無効とする旨の裁判を求めているのであるが、右投票無効の訴は要するに本件解職の投票の効力に関する訴に外ならないものであることは控訴人の主張及び本件口頭弁論の全趣旨に徴して疑を容れないところである。かような解職の投票の効力に関する訴については異議訴願の手続を経て初めて裁判所に出訴することができるものであることは前に述べたとおりであるが、本件投票無効の訴は投票の効力に関する異議訴願の手続を経ないで提起されたものであつて、たゞ投票前の過程における本件解職の請求に関する被控訴人の措置に対しさきに異議を申立てたが該異議申立は却下されこれに対し訴願の手続を採らなかつたに過ぎないものであることは本件口頭弁論の全趣旨に徴して明らかである。また前に述べたように行政事件訴訟特例法第二條但書の規定が地方自治法第六十六條の異議訴願の場合にも適用されるものとしても、本件投票無効の訴について投票の効力に関する異議訴願の手続を経ないで訴を提起し得る正当な事由の存することは控訴人提出の全証拠その他記録を精査してもこれを認めることができない。よつて本件投票無効の訴は不適法として却下を免れないものである。尤も本件投票無効の訴の第一審管轄裁判所は当高等裁判所であるから、原裁判所が右訴の提起を受けたときは当裁判所に移送すべきものであるに拘らず原裁判所において右訴を当裁判所に移送せず直にこれを不適法として却下したのは不当であつて、本來ならば原判決中右訴に関する部分はこれを取り消し原裁判所に差戻すべき筋合である。しかし当裁判所において右訴の部分の原判決を取消しこれを原裁決所に差戻しても結局これは当裁判所に移送されるのであるから右差戻手続は無用に帰し正当でない。上記の理由により当裁判所は原判決中本件投票無効の訴に関する部分を取り消し、当裁判所において第一審として右の訴を却下するものである。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十六條第八十九條を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 村木達夫 猪狩眞泰)

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